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第7回TBでボケましょう2006・後編
このエントリはnako1111さんのところで開催中の、「第7回TBでボケましょう2006」への参加作品・後編です。
まずは前編をお読みください。


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早めに仕事を切り上げ、夜11時に会社を出た。何かあったときのために、脅迫状に書かれてあった時間、午前0時には家にいないといけないだろうと思ったからだ。
いつも通り、迎えに来てくれたTに声をかける。

「何か変わったことは?」
「今のところございません。警察に通報いたしまして、パトカーを家の近くに常駐させてありますが、その他は。」
「よし、早いところ戻ろう。」

家に着いたときには、すでに11時半を回っていた。いつものように、Yが爽やかな笑顔で迎えてくれる。ホッとする一瞬だ。

「…何か、お飲みになりますか?」

つくづく勘のいいメイドだ。何も知らせていないはずなのに、いつもと何かが違うことをすでに感じ取っている。

「…ラム入りの紅茶を。」
「かしこまりました。」

私室に戻って着替えながら、いざという時、使用人に害が及ばないようにするにはどうしたらいいのだろう、とふと思った。…今まで、度重なる脅迫にもかかわらず、そんなことは考えてみもしなかったのだ。なんという雇い主であろうか。

…結局僕は、Yを守りたいのだ。

苦笑しつつ居間に行くと、ちょうどいいタイミングで紅茶が出来たところであった。Yがカップに注ぎ、ラム酒をちょっぴり入れると、部屋中に強烈な香りが漂う。

紅茶を淹れたカップを僕の前に置くと、Yはぴょこんと会釈して、部屋を出て行った。時計は0時5分前を指している。
軽いノックの音がして、入れ替わりにTが入ってきた。

「今のところ、異常はありません。」
「うむ。あと5分だな。」

秒針の刻む、カチカチという音がやけに大きく感じられる。

「旦那様。」
「うん?」
「もし…この家の中の誰かが、この脅迫事件に関わってるとするなら…旦那様は、どなただとお思いになりますか?」
「え?」

この家の中の誰かが、脅迫事件に関わっている…?

「昨晩も申し上げましたとおり、脅迫上の文面から見まして、犯人は旦那様の寝室の金庫のことを知っている人間です。この家の中の人間が犯人とは言わなくても、手引きをしている可能性は十分にあるのではないかと…」
「まさか…!この家の使用人は、十分な身元調査をしてから雇っているはずだろう?」
「ええ、その通りなのですが、悪意のある人間が使用人に目をつけて、何かの手段で自分たちの手先にすることは十分に考えられるわけで…」
「確かにそうだが…」

考えてみたこともなかった。

「Tはどう思う?」
「ここだけの話なのですが……」と、Tは声を潜めた。
「可能性が高いのは、一番最近入ったメイドのY…と私は睨んでいるのですが。」
「何?まさか!!」

思わず声が高くなる。

「しっ…旦那様!」Tは険しい目をして、僕を制した。
「いやしかし、あれほどきちんと働いてくれる子だぞ?Yは。」
「それはそうなのでございますが…」


ボーン、ボーン、ボーン……


柱時計が、午前0時を知らせた… と同時に、玄関ホールから、何かが割れて砕け散る、ものすごい音がした。

Tと僕が弾かれたように椅子から立ち上がる…と同時に、家中の明かりが消えた。


「旦那様、懐中電灯を!」

さすがはTだ。ポケットからさっと懐中電灯を2つ取り出し、僕にも渡す。大急ぎで玄関ホールへ行ってみると、シャンデリアが落ちて砕け散っていた。
Tが玄関脇にある、セキュリティーシステムのパネルをチェックする。「旦那様!システムの電源も全て落ちています。」
「何!?」
「警備員が駆けつけてくるまで、数分はかかるかと」
「よし、他に異常がないかどうかチェックしよう。僕は2階へ行く!」

2階には、僕の私室と家族の寝室がある。階段を駆け上がっていくと、母が怯えた顔で寝室の扉から顔を出している。
「何があったの?一体…」
「玄関のシャンデリアが落ちたんだ。他は大丈夫だよ!お母さんは部屋にいて。」
慌てて母が扉を閉めたと同時に、階下からTの声が。
「旦那様、台所で火の手が!!私は消火をします!」
「わかった、今行く!!」
引き返そうとしたとき、僕の私室の扉が開いているのが見えた…。



「……誰かいるのか?」

私室の入り口に立って、僕は中に呼びかけてみた。返事はない。
ゆっくりと、周囲をうかがいながら部屋の中に入る。僕の私室は2部屋からなっていて、書斎の奥に寝室があるのだ。
書斎には、人の気配は感じられない。僕はゆっくりと、寝室の扉を開けて中に入った。……僕の背後で、私室の入り口の戸が音も立てずに閉まったのに気づかぬまま。

懐中電灯で寝室を隅から隅まで照らしてみる。壁にも天井にも異常はない…が、床が一部はがされているのに気づいた。思わず駆け寄ってみると、中に埋め込まれた金庫がなくなっていた。

「手を上げろ」

後ろから、低い静かな男の声がした。振り返ると、ピストルを手にした男が立っていた。

「お前…何者だ!?」
「懐中電灯を置くんだ。手を上げろ!」

暗くて相手の顔はわからないが、ドスの利いた声だ。

「……何が目的なんだ。金か?」
声が震えそうになるのを、必死で抑えながら僕は男に尋ねた。
「いや…貴様の命だ。」
「…なぜだ。」
「2年前の貴様の事業の成功で、俺の会社はあおりをくって倒産した。廃人同様になった俺を家族は見放し、今や俺はただの浮浪者だ。…こんな思いをしてまで、生きながらえようとは思わない。しかし、死ぬなら絶対にお前を道連れにしてやろうと、以前から計画を練っていたのさ。」
「お前、まさかN社の……」
「……答える必要はないだろう。」男の口調は相変わらず静かだ。
「どうやってこの家に忍び込んだ?」
「ふふ…」

男はかすかに笑った。

「お前には、冥土の土産にいい思いをさせてやったよな?」

……めいどの土産……

「まさか……」



……男の拳銃が火を噴き、弾丸が僕の心臓を貫いた。






遠くなっていく意識の中に、Yの爽やかな笑顔が一瞬浮かび……そして、消えていった。






(The End)

■□■□■□■【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■
【ルール】
 お題の記事に対してトラックバックしてボケて下さい。
 審査は1つのお題に対し30トラバつく、もしくはお題投稿から48時間後に
 お題を出した人が独断で判断しチャンピオン(大賞)を決めます。
 チャンピオンになった人は発表の記事にトラバして次のお題を投稿します。
 1つのお題に対しては1人1トラバ(1ネタ)、
 同一人物が複数のブログで1つのお題に同時参加するのは不可とします。

 企画終了条件は
 全10回終了後、もしくは企画者が終了宣言をした時です。

 参加条件は特にないのでじゃんじゃんトラバをしてボケまくって下さい。

 ※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。

 企画元 毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
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……うわ~^^; 見事なベタだ。

あっ、ワトソン君突っ込まないで!!(ぢぇみにさんの作品参照のこと^^;)
by ho_neko | 2006-07-02 20:39 | TB企画・反省文
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ドイツ在住。日常生活で見かけたものごとから、TB企画等への参加までを扱うお遊び専用ブログ。このイラストは「猫の小手先」さんからお借りしました。

by ho_neko
雨降って蛙になる。(ぇ


この千社札はぢぇみにさんに作ってもらいました。
ありがとうございました!
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